この子らを救わん 愛の「おぎゃー献金」物語

親子何代にもわたって築いてきた土地も財産も一朝これがあってはたまったものでなく、あれほど の田畑、山々はまたたく間に人手に渡り、みるみるうちに没落してしまったのです。昨日までの裕福 な旧家暮らしから二間きりの長屋暮らしへ・:...。何も知らない、三人姉妹はいうに及ばず、当の父親、 母親の落胆ぶりもまた大きかったで あろうこと は十分察しがつこうというものです。 その日から昨日までとはがらりと変わった父親の「生活との闘い」が始まりました。小さな田舎町 のこと、大都市のように収入のよい小 ぎ れいな仕事がザラにあるわけではありません。とにかく小さ な家には重度の障害児一二人とその兄と妻とが待 っ ているのです。この五人の愛する家族のために、と にかく必死で働かなくてはな ません。 こうしてあるときは生命保険会社の外交員となっ り、あると は商事会社の運転手としてハンド ルをにぎる、といった具合いに職を転々と変えては、すこしでも収入のよい仕事を探しつつ一所懸命、 働いていました。 しかし、父親一人の力では育ち盛 りの子ら合わせて四 人と自分たち夫婦の六人家族の口をぬぐうの がやっとです。 もっとおいしいものを食べさせてやりたい、きれいな着物を着せてやりたい、そして自分たちの家 を…•••と思っても、その日の暮らしに追われる毎日では、とてものこ、これらの願いは満たされる わけもないのです。三人の娘たちと そして自分たち家族みんなのために、いかなる苦労もいとわな 40

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