この子らを救わん 愛の「おぎゃー献金」物語

さらに人間が動物と一線を画して、よりよく生きていけるということは、知覚、聴覚、臭覚などの 運動野における、よりよき働きはもちろんのことですが、前頭連合野の働きによるものが大きいとい われます。ものを考える、ものをつくり出す、意思を決定する能力こそ、今日の人間を人間たらしめ たことに思いをいたすべきです。 従って人間は単 に感情的に感覚的に行動するのでなく 、知性的に判断する能力を持ってい ます。知 識があり、この知識によって思考力が生まれ、この思考によって創造され意図される です。この知 性の原動力こそが人間たらしめるのであって、一人一人の人間が自己として尊厳たらしめるのです。 ここに人間としての個性が発現 され 、人格が形成されます。 前に生物を取り囲む環境について述べましたが、個は自己繁殖しつつ多(あるいは群)を形成しま す。従って個と個との間に起こる環境 無視することはできません。このことはわれわ 人間社会に おいても 、同じこと がいえます。個人と個人の関係と 、個人と多すなわち社会との関係においてです。 この関係を大別しますと、犠牲社会と利益社会の二つに分けられると思います。 犠牲社会とは、個は全のなかにあって、たえず自己を社会集団のために犠牲にすることです。利益 社会とは、個が全に優先することです。いわば民主主義社会がそうです。しかし民主主義社会は、社 会を構成する社会の一人一人が、自己の自主性を尊重することにとどまらず、他人の自主性も尊重す るという原則のうえに成り立たねばなりません。たえず 他人のことを考えるという前提が必要です。 210

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